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どこかで見たコカ

Author:どこかで見たコカ
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自作4つ目
 こんにちは。先日、大変な目にあい踏んだり蹴ったりなコカです。
 それは、台所から机までの短い距離で起こりました。
 開けっ放しにしていたドアノブに、服がひっかかったのです。普段なら「なんだよ、んも~」ですむのですが、なんとこの時コカの手には熱々のお湯が入ったカップめんが!さぁ、たいへん!予期せぬ力が加わり、カップ麺はコカの両手から飛び出し、あろう事か、足の甲にそのグラグラと煮立ったスープを器ごと浴びせかけたのです。
 「っ!!!」
 コレがかの有名な大泥棒、石川五右衛門も味わった釜茹でというものだろうか!足の甲限定ですがあまりの熱さに声も出ません。引きつった顔のまま慌てて洗面所に行き、足を冷やそうと流しまで足を持ち上げます。
 しかし悲劇はこれだけでは終わらない。
 勢い良く片足を持ち上げた反動で、地面についていた残りの片足がすべり、そのまま背後の壁で後頭部を強打!しかもその際、壁けの棚が衝撃で落下!墜落先は狙ったかのようにコカの上!右肩に痛恨の一撃!
 まさに一人お祭り騒ぎ。当然のように一部始終を家族に見られており、時間差で家は爆笑の渦に包まれました。

 その後、泣きっ面にハチとはこの事かと、足を冷やし続けるコカだったのでした……。

 それでは馬鹿話はこの辺で、今回の自作小説をば。
 




『どいつもこいつも面倒だ』



 僕の友達は少し変わっている。
 田中という至極普通の名前を持った、ごく普通の高校に通う、ごく普通の高校二年生なのだが、どういうわけだか自分が嫌われていると思っているのだ。
 そんなこと無いだろう。僕がそう言うと、田中は決まって「特に、同世代の女子に嫌われている」と返してくるのだ。この言葉を口にするとき、アイツは少しだけ目を潤ませ、悟ったような顔をするわけだが、いい加減、そのやり取りにも嫌気が差していた。
 今日だってそうだ。
 体育祭当日の朝である。いつものように田中と校門をくぐり、教室までの廊下をくだらない話でゲハゲハ笑いながら歩いていると、呼び止められた。無論僕ではない。田中が呼び止められたのだ。
 二人揃って振り向くと、予想通りA組の鈴木さんだった。彼女は毎日、田中へ声をかけてくるのだ。
「おはようございます、田中。今日もまた一段と貧乏そうでなにより」
「うるせぇ、金持ちは向こう行け」
 この会話も、もはや毎朝の日課である。
「ちょっと、朝の挨拶は礼儀でしょう!」
「あぁはいはいそうですね。おはよーおはよー。ほら、これでいいんだろ、金持ち娘」
「ふふ、おはようございます」
 鈴木さんは暴言を吐かれたにもかかわらず、嬉しそうにはにかむと、腰まで届く黒髪を弄んだ。ちなみに、彼女はこの辺一帯を所有する地主の娘で、金持ちであることは間違いないのだが、別に田中の家が目立って貧しいわけではない。
「じゃぁな」
「あ、ちょっとお待ちなさいな」
 そういう教育を受けたのだろうか、どこか時代がかった口調で、鈴木さんは田中を呼び止めた。
 これまた面倒くさげに顔だけを向け、田中は僕に聞こえるほど嫌みったらしく溜息をついた。鈴木さんは気付いていないのだろうか、ヤツの溜息なぞどこ吹く風で、鼻息荒く満面の笑みをこぼした。
「今日は待ちに待った体育祭。せっかくなので、賭けをしませんこと?」
「は? やんねーよ。そんじゃあな」
 にべも無く田中が言い捨てると、とたんに鈴木さんの顔が悲しげに曇った。
 あ~あ、泣くぞ。これは泣いちまうぞ。
 しかも彼女がこういう顔をする時、決まって僕に面倒ごとが降りかかる。
「彼を止めてくださいまし。お話を聞いていただきとうございます」
 やっぱりか。鈴木さんは僕の袖口を僅かに引っ張り涙目で懇願してきたのだ。
 自慢ではないが、こちとら上に二人の姉と下に二人の妹を持つ生粋の女系家族出身である。幼少期からの刷り込み教育の賜物か、女子に泣きつかれると断る事が出来ない。
 僕は、立ち去ろうとする田中の右腕をつかみ押しとどめる。ヤツもこっちを見て、僕の袖を引っ張る彼女の表情に気付き観念したのだろう。ぼりぼりと頭をかいた。
「ったく、なんだよ」
「……賭けをしませんこと?」
「だから、なんの賭けだよ」
「聞いてくださいますの?」
「聞かないとお前泣くし、後でコイツにお小言をくらうんだよ」
 僕を指差すな。田中の手を軽く叩き落とす。その隣で、鈴木さんはまるでピーカン晴れのお日様も顔負け、百点満点の笑顔を振りまいた。
「今日、偶然にも私は赤組、田中は白組なので、ここはひとつ、負けた方が勝った方の言う事を聞くというのはいかがでしょう」
「はぁ? お前は何を命令するつもりなんだよ」
「そうですね。……私の小間使いになっていただこうかしら。私が白といえば白になり、黒といえば黒になるような、そんな小間使いに」
「相変わらずえげつねぇなホントに」
 田中と共に、流石の僕も引いてしまった。
 お金持ちは、発想まで庶民とは違うものらしい。学校の廊下で、同級生に奴隷になれと彼女は言ったのだ。
「あら? もしかして逃げますの? 殿方のくせに情けない。あぁ情けない。いっそのこと犬猫のように去勢してしまいなさいな」
 さっきまでメソメソしていたのに見事なまでの早代わりである。だが、単純バカの田中には有効である。
「誰が逃げるかってんだ! やってやろうじゃねぇか!」
 沸点の低いバカが吼えたとき、鈴木さんが「計画通り」と呟いたのを僕は聞き逃さなかった。
「後から言い訳は聞きませんことよ?」
「おぅ! もし負けたら何でもいう事聞くさ! 一生小間使いをやってやる」
「毎朝、お味噌汁を飲んでくださいます?」
「ん? 朝は味噌汁だろ? まぁ、べつにいいけどな、絶対負けないからな!」
 そういう意味じゃないだろう。無駄に燃え上がる友人に、僕は苦笑いするしかなかった。
 なんせ、むざむざと釣り針にかかったバカだけが、自分が罠にかかったことに気付いていなかったのだから。

 その後、鼻歌交じりの鈴木さんと別れ、自分のクラスに入ると、田中の席には先客が居た。木村さんである。
 成績は超が付くほど優秀で、すらりとした長身に、肩口で切りそろえた黒髪と銀縁のメガネが彼女の知的な雰囲気を高めているように思う。友達と談笑しているようだったが、向こうもこっちに気がついたのだろう。
「あら、失礼」
 小さな尻を上げ、田中に席を譲ろうとした。だが、すんなりと事が進むのなら、田中はこうも歪まない。予想通りといえば、予想通り、いつも通りと言えばいつも通り。木村さんは机の脚に自分の足を絡めてしまい、偶然にも近くに立っていた田中を巻き込み、盛大にすっ転んでしまっていた。
 すんでの所で手を伸ばし、木村さんが地面に倒れることだけは阻止したが、田中はどうしようもない。目の前で、木村さんの腕が田中の首にめり込み、骨が外れるような嫌な音を聞きながら、あぁこれがラリアットというものなのかと感心してしまった。
 木村さんが田中を押し倒したぞと教室が歓声に包まれたが、田中が白目をむいて痙攣・泡を吹き始めたので、一転して静まり返り、当事者である木村さんは動揺しているのだろう、すっくと立ち上がり僕の肩に爪を立てながら震えていた。
「ど、どど、どうしよう。た、たた、田中君が死んじゃう。彼が死んだら、私どうしたらいいかわからない。田中君のお嫁さんになりたいのに、ど、どど、どうしよう。ね、ねぇ、どうしよう」
 大粒の涙をこぼしながら、狼狽する彼女に「くそ、可愛いな」誰かが呟いた。それを皮切りに、「普段クールな木村が取り乱すと、うん、そそる」「やっぱり可愛いとは思ってたんだけど、やっぱ可愛いわ」クラス中の男子から『木村さん可愛いコール』が沸きあがった。
 相変わらず元気なクラスメイト達に溜息をつきつつ、僕は目の前で泣きじゃくる木村さんをなだめる。
 まずは、足をどかしてやろうか。
 彼女に踏まれたままの田中の顔面が、ゴリッと骨のこすれる音を響かせる。なんだかさっきよりも痙攣が激しくなったように見えたが、それにしてもコイツ、この状態ではたして体育祭に参加できるのだろうか。

 そして、運命の体育祭は幕を開けることとなる。
 奇跡的に生還した田中は首に違和感があると不平不満をぶつくさ漏らしていたが、そんなバカにはお構い無しに、赤組・白組、両陣営死力を尽くし、戦況は一進一退を繰り返しながらも一時休戦。昼休憩を迎えていた。
 僕が手を洗おうとグランド脇の洗い場で順番を待っている最中、突然背を叩かれた。不意打ちである。小気味いい破裂音と共に僕の口から声に鳴らない何かが飛び出した。
「あははは、大げさなヤツね。こんなの痛いわけないじゃない」
 あまりの痛みにもがき苦しむ僕を笑うのは、同じクラスの佐藤さんだった。
 陸上部のエースでありながら、邪魔にしかならないであろうサイズの胸部を装備した彼女は、辺りをキョロキョロと見回している。
 正直言うと、この人は力が有り余っているのであまりお近づきになりたくはない。どうせアイツ絡みのことだろうから、腹も減っている今、余計に面倒である。。
 それで、用件は? 僕の意地悪な問いかけに、佐藤さんはとたんにモジモジとらしくない動きを見せた。彼女の頭で、適当に縛った短めのお下げ髪が揺れる。
「あのさ、あのね、そのさ、……田中、どこにいるか知ってる?」
 手に持った大き目の包みは弁当の類か。大方、体育祭に便乗してアイツに手料理を振舞おうと考えただろう。
 絶対に教えるなと口止めされてはいたが、ここで無駄に時間をかけると僕の休憩時間がなくなりかねない。
 田中の居場所をリークすると、
「ありがとっ!」
 彼女は照れたように笑い駆けていってしまった。
 それにしても普段の彼女から遠い今の姿は、何度見ても心温まるものがある。普段は勝気な彼女とのギャップに男は弱いものだと姉から聞いたことがある。確かに男子からの人気は高いようだから、あながちその説も間違いではないのだろう。
 しかしそうなってくると残念で仕方が無い。あれで料理が壊滅的に不味いことを除けば文句なしなのだが、神様はそこまで優しくないようだ。
 その後、便所で虹色のゲロを吐いている田中を見かけたが、アイツ、あの状態で午後の競技は大丈夫なのだろうか。

 なんだかんだですったもんだの体育祭もいよいよ大詰めを迎えていた。
 指先が痺れ、右と左の視点が合わないと田中は生まれたての小鹿のように震えていたが、そんなバカは置き去りに、赤組と白組の成績はほぼ同点のまま、後は最終種目を残すのみとなっていた。
 最後の種目は、代表リレーである。代表に選ばれていた佐藤さんが満面の笑みで近づいてきた。
「ぶっちぎりでバトンつないでくるよ!」
 田中は返事をしなかった。僕の隣で震えっぱなしである。どうやらよほど人命に関わるものを食わされたようだ。佐藤さんの声を聞くだけで、体が恐怖を感じているのだろう。
「……大丈夫ですか?」
 そんな田中が気になったのだろう、今度は逆隣から僕を挟んで木村さんが心配そうに声をかけてきた。朝の一件は彼女の中でどうにか処理できたようで、普段のクールぶりを取り戻していた。
 だが、またしても田中は返事をしなかった。今度は首をかばうように顔を伏せ、丸くなってしまった。身体が震えっぱなしのところをみると、今朝の殺されかけた記憶がフラッシュバックし、反射的に体が防御体制をとったのだろう。
「田中、本当に大丈夫なの?」
「……田中君、保健室行きますか?」
 美少女二人に囲まれているというのに恐怖で押しつぶされそうになっている友人が、なんだか気の毒になってきた。
 僕は田中の背中を優しくさすり、怖くない、怖くないよ、大丈夫だ、と穏やかに呟いた。それを続けるうちに落ち着いてきたようで、田中は恐る恐るだが、ようやく顔を上げた。
 僕は今から競技に出るというのにどこか不安げな佐藤さんの顔に気付き、田中を肘でつつく。何か言ってやれと目で伝えると、田中は少し考えるようなそぶりを見せ、大きく首を縦に振り、言い放った。
「……負けたら、罰ゲームだからな」
 斜め上の言葉に、思わず僕は絶句する。
 普通こういう場合、頑張れと励ますところだろうに、何でコイツは更なるプレッシャーを味方に与えているのだろうか。周りのクラスメイト達も概ね僕と同意見だったのだろう。皆が皆、目を見開いて信じられないといった表情をしていた。
「ば、罰ゲームって、なにすんのよ」
 恐る恐る聞き返した佐藤さんに、田中は口の端をひくつかせた。
「今度の日曜、俺の家に来い」
 そして、場の空気が凍りついた。今度こそ、満場一致で絶句である。こいつは何を言い出すんだと、皆、言葉が見つからない。
 凍りつくこと数十秒ほど。
 ふと「……家に連れ込んで何する気だよ」誰かが呟いた。
 その瞬間、佐藤さんの顔が真っ赤に発光した。見事としか言いようの無い早業である。
「あ、ちょ、ちょっ、あ、え、ちょ」
 電気ストーブのようになった彼女はもはや人語を話してはいなかった。手を前方に突き出したまま、目まで真っ赤にして不思議な呪文を唱えている。
 その時だった、僕の肩に激痛が走ったのだ。まるで万力かなにかで肩を押しつぶされるかのごとき痛みである。見ると、木村さんの白魚のような指が僕の右肩に食い込んでいた。
 だが僕は、その手を振りほどくことが出来そうにない。木村さんの表情を失った真顔が僕に動くことを許さない。
 単純で絶対的な恐怖である。まさにとばっちり。流れ弾が僕に直撃したのだ。僕は左隣に座る田中を、もう一度、さっきより強めに肘でつつく。発言の真意を聞くためである。
 田中はこっちを向くと悪そうに笑った。
「いやほら、佐藤は俺の事嫌いだろ? 今日も毒を盛られたしな。だからそれを利用して、本気を出させる。きっとアイツは死に物狂いで走るぜ」
 田中は小声でそこまで言うと、イラつくぐらいのドヤ顔を見せた。
「じ、じゃぁアタシ、もう集合だから、い、行くね」
 そうこうしているうちに、本部テントから集合の放送が流れ、佐藤さんは立ち上がった。――だが、彼女の腕はいつの間にか僕の隣から移動した木村さんの腕につかまれていた。
 応戦席の端。立つ二人の背中から、目に見えない気炎が吹き上がったように思う。
「何、木村さん? アタシ急いでるんだけど」
「……どうしても言っておきたいことがあって、少し良いかしら?」
 額同士が触れそうな距離で二人はにらみ合い、微動だにしない。木村さんのメガネが鈍く光り、佐藤さんの顔もいつの間にか不敵な笑みへと変わっていた。
「貴方のタイムとリレーメンバーのタイムを鑑みると、まず負けることは無いわ」
「そりゃどうも。褒めてくれてありがとう」
「ただし、誰も手を抜かないという前提での話でしかないの。ここまではわかるかしら」
「まぁ、勝負は時の運っていうから、何があるかわからないけどね」
「貴方、確か今日のコンディションはばっちりだと言っていたわよね?」
「さ~て、どうかなぁ? なんだか数秒前から足首が痛むのよ。もしかすると走り始めると悪化するかもしんないわ」
「……卑怯な手を使うじゃないの」
「卑怯? 違うわね、アタシは自分に与えられたチャンスを精一杯生かそうとしてるだけだから」
「……」
 お互い胸の前で腕を組み、両者を知るクラスメイト達は固唾をのんだ。一触即発の雰囲気に、明らかに体感温度は氷点下を切っている。
 元凶の田中はというと、つい今しがた、偶然舞い降りたモンシロチョウを追いかけていってしまった。やはり朝から続く不幸で、脳に深刻なダメージをおってしまっているのかもしれない。
 万事休すか。マンガやアニメ、映画やドラマならここで救いのヒーローがやってきたりするものだが、ここにいる全員が待ち望んだ存在はやってきそうにない。
 お手上げである。にらみ合う二人以外の皆がいっせいに匙を投げ始めた。そんなときだった。
「ごきげんよう」
 代わりに神様は僕らにプレゼントだと言わんばかりに、一人の少女を遣わしたのだ。
 やってきたのは、頭に赤い鉢巻を巻いた鈴木さんだった。金持ちの余裕か、はたまたお嬢様ゆえの世間知らずか、辺りの空気を1ミリグラムも読まずの登場である。動きやすいようにだろう、綺麗な黒髪は二つ結びにされていた。
 鈴木さんはにらみ合う女子二人を気にも留めず、ぐるりと応援席を見回すと、溜息をひとつ、残念そうに僕の隣に腰掛けた。
「見たところ、彼は不在のようですね。せっかく今朝の約束事を忘れていらっしゃらないか確認しようと思っていましたのに」
 そういえば、そんな約束をしていたな。僕はすっかり忘れていたが、はたして田中は覚えているだろうか。鈴木さんも、その辺りが気がかりなのだろう。頬に手を添えて、心配そうに首をかしげていた。
「私が勝ったら伴侶になっていただけるというから、今日は頑張っているというのに、本当、困った殿方で――」
「「――もめている場合ではないようね」」
 よくわからない急展開に、僕の頭はとても追いつきそうにない。鈴木さんの愚痴を聞いていると、いつの間にか、佐藤さんと木村さんが心の通い合った親友のように固い握手を交わしていた。
 いったい何が起きたのか。
「私、貴方の俊足は音すらも凌駕すると思っていたのだけど?」
 木村さんの笑みに、佐藤さんも勝気に言葉を返す。
「ふふん、甘いわね。アタシの足は光すらも追い抜くんだから!」
 二人はお互いに微笑みあうと、
「「この勝負、勝つわよ」」
 お互いの握り拳を軽く合わせた。
 堂々と歩いていく佐藤さんの背中を見ながら、僕は頭を傾げるしかなかった。
「なんでしょう、不思議な方々ですね」
 鈴木さんと二人、僕はもう一度頭をかしげた。
 その後、溝にはまって動けなくなっている田中を誰かが見たと言っていたが、明日にでも病院に連れて行くべきだろうか。まったく、手のかかるヤツである。

 やりたい放題だった体育祭は無事、白組の勝利で幕を下ろした。
 最終競技のリレーで見せた、佐藤さんのジェット機もかくやといわんばかりの走りは、後々伝説として語り継がれていくことだろう。
 そんな慌しかった体育祭の後片付けも終わり、生徒でごった返す帰り道。またも田中は深刻な顔で僕に告げた。
「やっぱり、俺は嫌われてるみたいだな」
 またその話か。僕がわざとらしく大げさに溜息をついて見せると、田中は遠くを見ながら辛そうに笑った。
「朝から奴隷になれって言われてよ、出会いがしらにラリアットで殺されかけて、昼は猛毒を口に押し込まれたんだぞ。……嫌われすぎだろ。なぁ、俺、アイツ達に何かしたか?」
 身体を小刻みに震わせながら、田中は、それでも泣くまいと堪えるように拳を握り締めていた。
 ――だから嫌われてないって。
 だけど、僕の声は、今の田中には届かないだろう。
 夕日が照らすなか、僕はアイツの肩に手を置いて、もう一度大きく溜息をついた。



 おわり



 少し長すぎましたね。
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自作4「どいつもこいつもめんどうだ」 | 16:49:43 | トラックバック(0) | コメント(0)
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